甲状腺がんの過剰診断に関する国内外の動向

第2回放射線医学県民健康管理センター国際シンポジウム

このシンポジウムは2020年2月2日から3日に福島市で開催され、福島県民健康調査の担当者と関連する学会の主要なメンバーが報告者として登壇しました。

松塚崇氏(福島県立医科大学)は今後福島県民に配布される甲状腺検査に関する新しい説明書について報告しました。この説明書には甲状腺超音波検査によるスクリーニングの害だけでなく利益についても書かれています。超音波検査で甲状腺がんを早期に発見することで手術の合併症が減り、また将来の再発や転移の発生を防ぐことができるので、対象者のQOLを向上させることができると説明しています。

貴田岡正史氏(イムス三芳総合病院)は福島で甲状腺検査を長期間続けるためには超音波検査の技術を広めることが重要との見解を示しました。検査の質を維持するため、福島県内の医療者に対する教育プログラムが計画されています。

鈴木眞一氏(福島県立医科大学)は福島県立医科大学で手術をした若年の甲状腺がんの患者の臨床データについて報告しました。ほとんどの患者は片葉切除術を受けました。片葉切除術を受けた患者のうち、現在までに7%程度が再発しています。この再発率は全摘術を受けた患者より高い結果となりました。鈴木氏は、他の国々と異なり、福島においては診断・治療をより洗練された方法で実施しているので過剰診断の被害は抑制されており、超音波検査によるスクリーニングは住民に害をもたらさないと説明しました。また、低レベルの放射線が健康に与える影響を調査するために、超音波スクリーニングは今後も継続すべきであると述べました。