甲状腺がんの過剰診断に関する国内外の動向

JCJTC月例報告(サンプル)

若年型甲状腺癌研究会(JCJTC)は月1回、海外の専門家に向けて国内の甲状腺がんの過剰診断の状況についてのレポートを配布しています。その一部を公開いたします。

JCJTC月例報告 2023年7月号

韓国と日本はほぼ同時期に、甲状腺超音波検査の過剰な実施に起因する甲状腺がんの過剰診断の被害を経験しました。しかし、その後のこれら2国は全く異なる対応を取りました。 韓国では、良識ある専門家がマスメディアと連携して「反過剰診断キャンペーン」を展開した結果、過剰診断の概念が国民に広まり、2015年以降被害は急速に沈静化しました。 これに対し、福島県の甲状腺検査の方法は最初から全く変わっておらず、市民団体による無秩序な甲状腺検査は放置され何の対策も講じられていません。その結果被害は拡大し続けています。この違いはどのようにして生じたのでしょうか?
以下は推測の一つです。古来より日本社会で最も大切にされてきた概念は「協調性」でした。協調性を表す日本語は「和」であり、実はこれは「日本」そのものを意味する言葉でもあります。日本人は集団として一方向に流れる傾向があります。一つの大きな目標を一緒に達成しようとする場合、これは大きな利点となります。しかし、国家の威信をかけたプロジェクトが間違いだったと判明すると、引き返すのは困難になるのです。
他の国ではこのような場合、多くの議論が交わされ改善する方策が検討されるでしょう。しかし日本では逆に、起こったことを正当化しようとしたり、ごたごたの原因となり得る議論を封印することに多大なエネルギーが注がれるのです。特に学会ではこの傾向が顕著です。例えば、これは海外の専門家にとっては驚くべき事実かもしれませんが、福島の甲状腺検査が有害であるとする見解を公に表明しているのは、日本の甲状腺専門医872人中わずか2人だけなのです。
あまり喜ばしいことではありませんが、これらのことから日本は過剰診断大国と言われています。日本が神経芽細胞腫の過剰診断の被害に見舞われた時にもスクリーニングは30年以上続けられました。日本国内の専門家が海外からの痛烈な批判にさらされて初めて、その害が止んだのです。福島県における甲状腺がんの過剰診断も同様の道をたどる可能性が高いです。したがって、日本の現状を海外の専門家に知ってもらうことが急務です。